カルロス・ゴーン逮捕事件について考えるブログ

一切の先入観を持たず、公平な立場でゴーン事件について考察するブログです。

第2回 バッシング報道

ゴーン逮捕の翌日、2018年11月20日から、テレビ、新聞、雑誌、ネットニュースなど、あらゆるメディアでゴーン事件が大きく扱われるようになった。が、その内容は、ゴーンとその家族がいかにして日産自動車という会社を私物化し、食い物にしていたのかというものだった。

 

例えば日本経済新聞では11月20日

「報酬50億円、過少申告」

「ゴーン氏、私的流用か 自宅取得、日産が負担」

という見出しで、ゴーンの不正とされるものを大きなスペースをとって報道。

 

さらには日産社員の「彼(ゴーン会長)はお金がほしかったんでしょう」

一般の主婦の「なぜ不正してまで多くの金がほしかったのか」

など、すでにゴーンが不正をしていたことが確定したかのようなコメントを掲載していた。

 

ゴーンの不正に関する報道はその後も続き、

11月21日

「次々と高級住宅 ブラジル、レバノン、フランス、オランダ」

 

11月23日

「元会長姉に数千万円 コンサルタント契約 実績確認できず」

 

日経以外の読売、朝日、毎日、産経や、その他の地方新聞、雑誌なども同様の報道を行っていたが、特に『女性自身』は11月29日の記事で

「ゴーン容疑者変えた年下妻 挙式はベルサイユ宮殿で総額80億円」

と、ゴーンが自身の結婚式のために日産に80億円を支出させた疑惑を報道。

 

さらにはテレビのワイドショーも、連日長い時間を割いてゴーンの不正とされるものを流し、あたかも日本中のマスコミがメディアミックスでゴーンに対するバッシング報道を行っているかのような様相を呈してきた。

 

これらの報道を受けて、多くの日本人がネット上で反応を示したが、その内容は

「二万人の日産社員を解雇して苦しめたゴーンが隠れて報酬を受け取って巨額の脱税をし、それだけでなく、家族ぐるみで会社に家を買わせ、架空のコンサル契約や80億円の結婚式の費用を会社に負担させて、多額の損害を与えていたこと」を強く非難するものがほとんどだった。

 

ヤフーニュースでは、ゴーン関連のニュースのコメント欄にゴーンとその家族に対する罵詈雑言が何千件も書き込まれ、上位に表示されているものにはあっという間に数万の親指を立てた賛同ボタンが押されている有様だった。

 

私はこれを見て「怖いことが起きているな」と思った。現時点ではゴーンが逮捕された容疑は金融商品取引法違反の一件だけで、それもどういう名目で報酬が支払われたのか、そもそも多くの人が考えているように本当に脱税だったのか、など、その詳細も一切明らかになっていない。

 

それ以外の不正とされるものも、無罪推定原則から言えば、まだ一方的に報道されただけで逮捕も起訴もされていないのだから、当然ゴーンは無罪と推定されるべきなのに、ほとんどの日本人はゴーンの有罪が確定したものと考え、ゴーンとその家族は日産に大損害を与えた犯罪者として扱われて当然だと考えているようだった。

 

この時点の私自身のこの事件に対する見解は「まだ起訴もされておらず、検察側、被告側双方の主張が何も明らかになっていない現状では、ゴーンが有罪か無罪かについては判断のしようがない」というものだったが、その一方で、報道されただけで逮捕もされていない事案で、大多数の日本人がゴーンの有罪が確定したと決めつけている態度には、危険なものを強く感じたのだった。

 

会計と犯罪――郵便不正から日産ゴーン事件まで

会計と犯罪――郵便不正から日産ゴーン事件まで

  • 作者:細野 祐二
  • 発売日: 2019/05/30
  • メディア: 単行本